近年日本では、発達教育学、という考え方が、広まってきました。
この考え方が広まってきた背景としては、
日本人の10%近くの人が何かしらの発達障害を抱えている、と言われているからです。
もちろん、発達障害、と言っても一概に悪いものとは言えません。
アインシュタインが発達障害の一種であるADHDだった、というのは有名な話かと思います。
また、発達教育学が発展していく中で、発達心理学というのも発展していきました。
発達心理学は発達最中にあたる、子どもの心理に基づき、何をしたらどんな影響を与えるか、という学問です。
今日はこの発達心理学から、小学校入学までの年齢の子向けの
習い事に必要な要素を考えてみましょう。
発達心理学から考察する小学校入学までにオススメの年齢別習い事
理論的な話が少し多くなりますが、
「なぜその習い事をならわすのがいいのか」
の理由の一部がわかり、
習い事について少し考えて頂けたら幸いです。
また、発達心理学的な観点で習い事を考えることはとても大切です。
心理学用語にレディネス(学習準備段階)と言う言葉があります。
レディネス(学習準備段階)は、技能の習得には必要な年齢や成長があるという意味です。
つまり、年齢が低い段階で算数を教えても意味がなく、レディネス(学習準備段階)を満たずにそれをすると、成長に影響がないばかりか、悪影響を与えることもあります。
“1、0〜2歳にオススメの習い事(親と一緒の習い事)
0〜2歳の時期は、認知の発達過程では感覚運動期などと呼ばれています。
この時期は、子供が遊びや運動を通して五感やバランス感覚を養う時期であると言われています。つまり、この時期に習い事として大切な要素は「運動を通して身体感覚を磨く」と「五感をしっかりと養う」ということです。
しかし、ただ単に子供に遊びや運動をさせれば良いという訳ではありません。
この時期の子供は、感覚運動以上に重視しなければならない発達課題があります。それは、基本的信頼関係の確立です。基本的信頼関係は養育者との愛着によって育まれます。
発達教育、幼児教育では有名な実験で「ハーローの実験」というものがあります。
イギリスの心理学者であるハーローは、「針金製の猿」と「布製の猿」を母親と見たて、子猿を育てる、という実験で、子猿の行動を観察したことがあります。
すると、「布製の猿」に育てられた子猿は、環境に対して好奇心旺盛であったのに対して、「針金製の猿」に育てられた子猿は、環境に好奇心を示せずに、環境に対応できず直ぐに死んでしまいました。
このことから、わかるように愛着には「身体的な柔らかな接触」が一番大切だと言われています。また、愛着は好奇心の基盤になります。逆に言えば、この時期の子供は、親との身体接触を通して基本的信頼関係と好奇心を養っています。
以上の条件を踏まえて、この時期にオススメな習い事を満たす条件は「身体感覚を養う遊びであること」「養育者との身体的接触」「五感を使うこと」を伴うことが求められます。
以上のことを踏まえて、それらの条件を満たすオススメ習い事は、親と音楽に合わせて身体運動を促す「リトミック教室」や「親子で参加する体操教室」「音楽教室」がオススメです。また、1歳を過ぎてからは親と一緒に行う「乗馬体験」も、身体のバランス感覚を養いますし、体温の高い馬の、柔らかな毛並みから感じる身体接触も子供に安心感をもたらしオススメです。
馬は発達障害がある子供にも乗馬療法として用いられ、小さな子供や発達障害児にもオススメです。
「3歳までの英語教育で子供の英語耳をつくる」と言いうのは有名な話で、
効果は確実にありますが、ここでは「英語を話せるようになる」という観点ではなく
「子供の成長を促進させる」という観点のため、飛ばさせていただきます。
2、2歳〜3歳にオススメの習い事(親から離れて習い事)
この時期になると、子供は愛着によって培った好奇心を背景に様々な一人遊びをするようになります。
同時に、「自己」という意識が芽生えて「イヤイヤ期」が始まる時期でもあります。イヤイヤ期は自我の芽生えでもありますし、また同時に「自律心」を養う絶好のチャンスになります。
そのため、習い事としては親元を離れた集団的な活動の中にも入れるようになります。しかし、この時期の子供は、他者の気持ちを自分に置き換えることができない自己中心性を特徴としているため、習い事で集団規範を強要することはレディネス(学習準備段階)を満たさずに成長に悪影響を及ぼす場合があるので注意が必要です。
そのような観点から、オススメの習い事を考えると集団スポーツのようなサッカーや野球はまだすこし早く、細かいルールがなく集団で運動や遊んでいる時間を共有できるようなボールを使った「バルシューレ」や「親元を離れて行う体操教室」「水泳教室」などの習い事がオススメです。
3、4歳〜7歳にオススメの習い事(語学学習や集団の中での習い事)
4歳頃になると子供は、他者の気持ちを自分に置き換えて考えられるようになる「心の理論」が完成します。
この頃になると、他者の行動を見て学ぶ模倣学習や観察学習など社会的学習が進むようになるので、集団の中のルールを守ったり、人と協力して遊ぶことができるようになります。また、言語的な側面も進み、概念を体系化できるようになります。
例えば、赤色、白色、黄色と言ったような色の概念の体系化などです。
このような観点から、この時期には様々な習い事ができるようになります。
特にオススメなのは、社会的学習が進む時期なのでサッカーや野球といった集団スポーツがオススメです。
また、バレエやダンスなどその他スポーツにおいても、教室内での社会学習が進むのでオススメです。
英語教室、日本語教室、速読教室、等の語学学習については、12歳までの間は、脳内の特異部位であるLAD(生得的言語学習システム)が活発に働いているので、12歳までの全年齢で適用と言えます。
ただし、効率性という意味では4歳くらいからが特に言語概念の体系化が進むので、日本語教室は、この時期にオススメの習い事です。
また、言語概念の体系化に伴い数字概念も完成してくるので6〜7歳頃には算数の計算や平仮名の練習に取り組む習い事に参加することもオススメです。”
いかがでしょうか?
今回は「発達心理学」の観点で書かせていただきました。
一般的にオススメされる習い事がどのような意味でおすすめか、というのを考える一つのきっかけになれれば幸いです。